前回の続き
近所の人の家で一晩お世話になっていたとき、ずっと泣いていた記憶しかない。
少し落ち着いたときにその家のおばちゃんが、ラップで包んだ塩握りをくれて、それを食べた。
フローリングの床の上で、集まった近所の人たちと雑魚寝しているときひとりのおばちゃんが余震が来るたびに「また揺れた」っていうものだからなかなか寝れなかった。
きっとおばちゃんも平気なふりしてるけど、またあの大きな地震がくるんじゃないか、また津波がくるんじゃないか不安だったんだと思う。
翌日。
父親が来てるっていうんで外に出た。
そしたら空にはヘリが飛んでて、山の坂道から見える、少し離れた橋の上には自衛隊のトラックがたくさん並んでる。
明るい青空の下で、一面ちゃいろに覆われたふるさとをまた目にして、昨日起きたことは夢でもなんでもなく現実なんだなって思った。
それから市役所の人と思われる人が縁石の上をよたよたと歩きながら、大勢で被害状況を確認しに来たのをみた。
市役所から縁石つたって何キロも歩いてきたのかよ。
落ちる落ちる!って感じで歩いているのをみてなんだか無性に腹が立った。
そんな恰好でしか来れないなら来なきゃいいのに。
それからは父親と隣町にある母の実家に行くことになり、車のあるところまで父におぶってもらった。
うちでは祖父母が米を育てていたんだけれど、小さいころに田植えの時期に田んぼの中に入りたくて入ってみたものの、泥にはまって抜け出せなくて妹とわーわーやってるところ、
父親がやれやれって感じで泥からスポッと抜いてくれてたんだけど、なんだかそんなこと思い出した。
この年でまた父が私を泥から守ってくれるとは思いもしなかった。
家の2階に残された祖父母は父親の妹の家でお世話になることになって、じーちゃんとばーちゃんとはそこで別れた。
母親の実家にいくと、そこには妹と母、叔母と叔父さんがいて、あんまり覚えてないけど妹に津波の事聞かれたり、あとは妹や母親がどう過ごしてたか聞いた。
私が津波に飲まれたと分かったとき、なるべくテレビは見ない方がいいと気を使われた。
妹の高校の体育館は、死体置き場になってるらしい。
母親は津波が来たというので心配になって山の方から向かって家の近くまで来てたらしいけど、一緒に来ていた職場の人に「あ~○○さん家、津波でやられちゃってるね」と言われたらしく
それで私が死んだと思って実家で泣いていたらしい。
そのとき高校も中退して心身ともにボロボロだったから大学受験すらできず、母親との関係も終わってて
きっと母親はあたしが可愛くないし、消えていなくなればいいって思ってるはずに違いないって思ってたから正直びっくりした。
それで母親の実家についてから分かったんだよな。
原発が爆発したの。
父親が原発の爆発音聞いててさ。
そのとき職場にいた父親が、雷みたいなゴロゴロ~って音がしたから
職場の人と「原発でも爆発したんじゃないかw」と冗談を言っていたらしい。
本 当 に 爆 発 し て た
初めて「放射能」とか「被ばく」ってワードを聞いて、第二次世界大戦のあのイメージしかなかったから、せっかく津波から一命をとりとめたのに原発のせいで「死ぬの?」って思った
その夜はマスクをして寝るようにしたんだけど、マスクが効果あるのかどうかも分からなかったし、
死ぬかもしれないんだって怯えながら一晩過ごした。
その翌々日に父親の車で福島市の避難所に行くことになって、避難所生活がはじまる…
続く。
【1話から↓】