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ファッションとメンタルと4毒抜き

あのときのこと。東日本大震災 【第2話】こんなことが起きても星だけはきれいでな

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前回の続き。


津波が引いた後、3人で2階に上った。

ちなみに津波が来る前に家にきていたじーさんは、どうなったのか分からない。

記憶がまったくない。

津波が来たとき外に出て行ったのかどうかさえ覚えてない。

こわいので考えないようにしてる。


それで祖父母と3人で2階の私のに部屋に入って、ベランダから外の様子を見たらあたり一面茶色。すごく静か。

いつもなら5時に音楽が流れるのにそれがないからか、

元から静かなところではあるけど、いのちの気配をまるで感じない。


一体何が起こっているのか分からなかったし、自分は我慢強いと思っていたのだけれど、何が起こっているか、現状を把握しようとすると頭がふわっとして、崩れ落ちそうになった。


家の目の前は田んぼが広がっていて、小さい頃はよく犬の散歩に行ったし、

冬なんかは水を張った田んぼに白鳥がよく来ていたから、朝食を食べた後にばーちゃんの食パンをくすねて妹とエサをやりに行った。

その田んぼも泥で覆われていて、なくなったって思った。初めて腰を抜かす体験をした。

でも人間ちゃんとしてるものでここで気を抜いたら本当にやばいと思ったのか、次に自分が何をすべきなのか考えた。


まず着替え。

自分の服はあるけど祖父母の着替えがないので父親の古いスウェットを探した。

いつ助けが来るか分からない。

食べ物がなくてもとりあえず飲み物…と1階の台所に行ったら冷蔵庫が扉を上にして倒れてる。

そこからペットボトルのお茶とジュース

あと炊飯器を開いてみたら焚いてあるお米が無事だったから、戸棚の中にあった汚れてない鍋にご飯をよそって2階に上がった。


それから2階のチェック。

なにか使えそうなものはないか父母の部屋や、妹の部屋に入っていろいろ探した。

そしたら妹の部屋からなにやらTVの見れるソニーのウォークマンの様なものを見つけた。

しかも充電もある。

それを見たらひたすらTVは同じような報道をしていて、混乱が続いてるなって感じだった。


次に安否確認。

ケータイは水没してしまったから連絡はとれない。


4kmくらい歩けば町につく。でも1階はがれきでふさがれてて、外に出るには2階から出るしかない。でも、じーちゃんばーちゃんは?

山の上の近所の人にケータイ借りにいくか?

と思い、2階から外に出る事にした。

ちょうど、2階の屋根にがれきのトタン屋根が覆われていて、滑り台のようになっていたため、ここから降りられそう。

それでもトタン屋根から地面まで高さがありそうだったから、毛布を何枚か下におろしてクッションにした。

じーちゃんとばーちゃんに言うと危ないと反対されそうだったので黙って外に出た。


山の上へはちょっと歩いたところに道があるから、すぐ行けると思った。

が。

実際降りてみたら太ももがほとんど埋まるくらいの泥で、なかなか前に進めない。

これはやばいと思っていたら近所の別のじーさんが「大丈夫かー」と後ろからやってきて高齢なのに私の事をおぶってくれて家の後ろの山まで行けた。

私のことを背負いながら泥の中前を進むじーさんがすごくたくましくて、男の人って力強いんだなーって

男の人って年とっても男なんだなって思った。


そのままじーさんと近所の人のところに行ってケータイを貸してもらうとやっぱり繋がらない。

というかそのときすごい泣いてた。

緊張の糸が切れたのか、誰かに会ってホッとしたのか、なんか泣いた。

小さいころから人前で泣くような感じではないのに泣いた。


そのままその人の家のとこで一晩お世話になったんだけど一晩中余震が続いて気持ち悪かった。

家の中にいるのに船の上にいるみたい。


その人の家にはほかにも近所の人が集まっていたんだけど、雰囲気は意外にも暗くなかった

「○○さんとこは車買い替えたばかりなのに流されたらしいw」「まいったことになったねえ~…」とわーわー言ってた

あまりにも被害がすごすぎてきっとみんな受け入れられなかったんだと思うし、現実をそのまま受け入れて暗くなってしまったらなにかがぶっこわれるって思ったんだと思う。

その夜その家にきていたおばちゃんが、「さっき外に出てみたけど、こんなことになっているっていうのに、星だけはきれいでな」って言ったのが今でも覚えてる。


続く。